業界戦略担当バイスプレジデント、Brad Williams
数百万台ものスマート・サーモスタットが指示してくれる相手を探しており、電力網の端には発電または充電を担っている、さらに数百万台のスマート・デバイスがあります。これらすべてが、より高度な目的のための指示を待っています。
これらは広大なネットワークを構成する分散型エネルギー資源(DER)であり、その大半は世界中の家庭や企業のメーターの先に設置されています。公益事業のエコシステムにこれらのDERを組み込むことで、すべての顧客に対する効率性と信頼性が高まり、電力網が大きなメリットをもたらす可能性があります。
これらの数百万個のDERには、DERを管理して効率を高めるポータルまたはマーケットプレイスが必要です。分散型エネルギー資源市場(DERM)ポータルは、この組織化されていないネットワークを連動して機能する一元化された構造に変え、電力システムのメリットを引き出す可能性があります。しかし、これを実現するは、単にエンジニアリング上の問題を解決するだけでなく、顧客と規制当局のサポートも必要です。
これらの資産は既に設置されていて、主に公益事業の最終顧客が所有しており、調査によると、大部分の顧客はピーク・イベント時の需要を緩和するために、DERを一定期間貸し出すことを望んでいます。
これで、両者が前向きであることが確認できました。では、どのように実現すればよいのでしょうか。詳細に踏み込むと複雑な問題を扱う必要があるため、ここでは、概要のみを説明します。これには、さまざまな高度な考え方が必要になりますが、実現可能な解決策に結び付けることができると確信しています。
いくつかの機能要件
屋上のソーラー・パネルやスマート・サーモスタットから電気自動車や充電器まで、すべてが潜在的な資源であり、公益事業者はそれらを使用して、電力網の信頼性とよりスムーズな運用を確保できます。公益事業には、DERを管理するための接続プロセスとプログラムがあり、多くの顧客がそれらのプログラムに登録しています。FERC Order 2222で提案されているものなど、より幅広いDERマーケット運営を促進するために、DERデータを安全に接続するDERマーケット・ポータルが必要です。
DERマーケット・ポータルの役割は、スマート・サーモスタットやその他のDERの運用管理だけではありません。また、顧客および公益事業者のDERプログラム管理、フィールド・サービス、およびグリッドの調整を最適化するバック・オフィス分析もサポートします。公益事業者は、分散型エネルギー資源管理システム(DERMS)を使用することで、そのシステムに接続されているすべてのDERの可視化、モデル化、ディスパッチ、および制御を行うことができます。
前述したように、包括的なエンタープライズ・レベルのDERMSは、以下の主要な機能要件をサポートする必要があります。
これらの公益事業用機能を組み合せると、独立系統運用機関(ISO)全体または地域送電機関(RTO)と同程度の広い範囲にわたって分散型エネルギー資産を調整できるインフラストラクチャが実現します。米国の9つのISO/RTOは、各DERMポータルを運用するのに最適な場所です。欧州でも同様のマーケット運営が求められています。
規制当局の参加の必要性
このDERMポータル作成への移行は容易である必要があり、米国連邦エネルギー規制委員会(FERC)が支援しています。FERC Order 2222は、この環境を構築する機会をもたらします。実質的にFERCは、2222により、DERのための卸売市場を開設しています。各州の公益事業委員会(PUC)は、それに追随して、DERが各地域の電気ネットワークに接続できるようにする必要があります。
大きな課題の1つは、公益事業者へのバリュー・ストリームを作り出すことです。地方自治体や州のPUCは、公益事業者にとって、この潜在的な収益化における重要な役割を担います。規制当局はインセンティブを提供して、公益事業者が顧客にメリットをもたらすプログラムを作成するのを促し、双方にとって参加することに価値がある状況を作る必要があります。
大容量バッテリー・ストレージ施設のように、大規模なDERは直接参加できますが、大半のDERは小規模であり、公益事業者がDERをネットワークに組み込む必要があります。サービス提供地域全体に散在する数千のDERを統合的なネットワークに集約することで、公益事業者はこれらのデバイスがもたらす効率性を活用できます。
数千人の顧客がこれらの資産を所有し、それらのデバイスのパフォーマンスを制御しています。公益事業者は、数時間にわたってDERを制御することについて顧客の同意を得る必要があり、それによって、グリッド制約を緩和し、負荷の軽減、電圧の調整、エネルギーの節約を行い、最終的には信頼性を向上させることができます。規制政策は、この取り組みに非常に大きな影響を及ぼします。インセンティブによってコスト効果の高いプログラムの作成につながれば、公益事業者は、顧客を卸売電力市場に呼び込み、顧客や公益事業への投資に見合った付加価値を生み出すことができます。
デジタルツイン
製造業界では、デジタルツインを数年間使用して、メンテナンスを予測したり、機械またはプロセスが現実の世界でどのように機能するかについてのアイデアを試したりしています。これらのデジタルツインは、物理オブジェクトの仮想的なコピーであり、さまざまな環境で何が起こるかを確認するのに役立ちます。
一部の製造業者は、風力発電所のデジタルツイン・シミュレーションを開始し、地域の地形が発電能力にどのように影響するかを調べています。公益事業部門でも、デジタルツインを取り入れる時期が来ていると思います。これらは、実際のDERの仮想的に表現したものであり、予測モデルを支援でき、顧客所有のデバイスと公益事業者の重要な運用システムの間の検証とサイバーセキュリティに役立つ仮想的な「エアギャップ」を提供します。
デジタルツイン予測モデルを使用すると、公益事業者は、翌日の需要スケジュールに基づいて必要なDERの数を非常に正確に判断できます。これらのモデルとグリッドの不測の事態に基づいて、発電量を調整することもできます。
公益事業者は、顧客が寛大に許可しているDERとの接続権限を乱用するべきではありません。デジタルツインを使用することで、将来のピーク・イベント時に必要になる可能性のあるDERの数と期間をより正確に把握できます。それぞれの顧客のデバイスを少しずつ活用することで、長期的には、より高く評価され、よりサステナブルになります。
何もしなければ、逆潮流、サービスの過負荷、電圧スイングなど、さまざまな問題によってグリッドの混乱が発生し、その結果、顧客へのサービスが失われる恐れがあります。DERとコミュニケーションをとり、精密な予測のためのテクノロジーが組み込まれているDERマーケットプレイスでは、公益事業業界とその顧客に大きなメリットがもたらされることでしょう。
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